今回のコラムから、乳房炎に関わる「方法」として、搾乳法および乳房炎の診断・治療法について解説していきます。
まず、「搾乳法」について、説明します。
正しい搾乳法については、すでに多くの成書で報告されていますが、一般的には以下の方法が推奨されています。
1.汚れが著しい場合のみ、乳頭の汚れを除去
2.ストリップカップに前搾り(1乳頭あたり、しっかり5回以上行う)
3.消毒液に浸したタオルで乳頭を清拭・殺菌
4.使い捨てペーパータオルで拭き取り・乾燥
5.プレディッピングの場合、コンタクトタイム(30秒)後に拭き取り・乾燥
6.前搾りから1分~1分30秒後にミルカーを装着
(空気流入を避けて、乳房と正しい位置関係で装着)
7.ライナースリップはすぐに直す
8.過搾乳、マシンストリッピングはやらない
9.原則は自動離脱(5分程度で搾り終わる)→真空遮断して4本同時に離脱
10.すぐにポストディッピング(乳頭付け根まで浸漬)
正しい搾乳法自体は非常にシンプルですが、それを実践するには、搾乳作業を分担しないことが重要です。
パーラーであれば、1人が2頭の牛を担当し、1頭目の前搾り~プレディッピングを実施してから2頭目の前搾り~プレディッピングを行い、それから1頭目に戻って拭取り→ミルカー装着を行います。
そして、2頭目のミルカー装着までを完結させてから、次の2頭の作業に移ります。
つなぎ牛舎であれば、1人あたりの搾乳ユニット台数が3台以下(理想は2台以下)であることが重要です。
また、ミルカー離脱条件は一般に0.7~1.0kg/minですが、低い離脱条件(例:0.3kg/min)で搾乳していると、畜主が気づかないまま過搾乳になっているケースがあります。
正しい搾乳法を実践するには、実は周辺の作業体系や機械設定まで整えておく必要があります。
企業では、「作業手順書(マニュアル)」を作成して、生産方法を管理します。
しかし、畜産農場では、必ずしもマニュアルを作成していません。
そのため、親子あるいは従業員間でやり方が異なる場合が多く、生産性を低下させています。
乳房炎を防除する上では、農場のルールとして「搾乳マニュアル」を作成することが重要です。
ぜひ、「搾乳マニュアル」の作成に取り組んでいただければと思います。