コラム

9.搾乳法

今回のコラムから、乳房炎に関わる「方法」として、搾乳法および乳房炎の診断・治療法について解説していきます。

まず、「搾乳法」について、説明します。

正しい搾乳法については、すでに多くの成書で報告されていますが、一般的には以下の方法が推奨されています。

1.汚れが著しい場合のみ、乳頭の汚れを除去

2.ストリップカップに前搾り(1乳頭あたり、しっかり5回以上行う)

3.消毒液に浸したタオルで乳頭を清拭・殺菌

4.使い捨てペーパータオルで拭き取り・乾燥

5.プレディッピングの場合、コンタクトタイム(30秒)後に拭き取り・乾燥

6.前搾りから1分~1分30秒後にミルカーを装着
(空気流入を避けて、乳房と正しい位置関係で装着)

7.ライナースリップはすぐに直す

8.過搾乳、マシンストリッピングはやらない

9.原則は自動離脱(5分程度で搾り終わる)→真空遮断して4本同時に離脱

10.すぐにポストディッピング(乳頭付け根まで浸漬)

正しい搾乳法自体は非常にシンプルですが、それを実践するには、搾乳作業を分担しないことが重要です。

パーラーであれば、1人が2頭の牛を担当し、1頭目の前搾り~プレディッピングを実施してから2頭目の前搾り~プレディッピングを行い、それから1頭目に戻って拭取り→ミルカー装着を行います。

そして、2頭目のミルカー装着までを完結させてから、次の2頭の作業に移ります。

つなぎ牛舎であれば、1人あたりの搾乳ユニット台数が3台以下(理想は2台以下)であることが重要です。

また、ミルカー離脱条件は一般に0.7~1.0kg/minですが、低い離脱条件(例:0.3kg/min)で搾乳していると、畜主が気づかないまま過搾乳になっているケースがあります。

正しい搾乳法を実践するには、実は周辺の作業体系や機械設定まで整えておく必要があります。

企業では、「作業手順書(マニュアル)」を作成して、生産方法を管理します。

しかし、畜産農場では、必ずしもマニュアルを作成していません。

そのため、親子あるいは従業員間でやり方が異なる場合が多く、生産性を低下させています。

乳房炎を防除する上では、農場のルールとして「搾乳マニュアル」を作成することが重要です。

ぜひ、「搾乳マニュアル」の作成に取り組んでいただければと思います。

赤松ファームクリニック

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