乳房炎防除

乳房炎について

 当クリニックでは、乳房炎総合防除プログラム(総合的な分析と改善プランの提供)を実施し、乳質改善をサポートします。乳牛の三大疾病は「乳房炎、周産期病、繁殖障害」といわれていますが、とりわけ乳房炎は乳を廃棄するため、経済被害が大きく、日本乳房炎研究会は年間800億円の経済損失を報告しています。

乳房炎の要因分析

 乳房炎は感染症ですが、搾乳者の技量、牛の健康性、原因菌に基づいた治療法の有無、搾乳機械の適切性など、発生要因が多岐にわたるため、防除が難しいといわれています。

一般に、企業(工業)では生産成績に問題がある場合、生産工程(プロセス)のどこかに問題があると考え、工程を人・原材料・施設(機械)・方法・評価系の5要因から分析し、多岐にわたる要因の中から真因を探索します。これを乳房炎に応用すると、以下のようになります。

乳房炎を対象としたタートルチャート (原図)

 乳房炎が多いことは、“搾乳”という工程(プロセス)のどこかに原因があります。そこで、“搾乳プロセス”に影響する5つの要因を上図のように図式化します。この図は亀を上から見た形に似ているので、“タートルチャート”といいます。そして、この分析手法を「タートルチャートを用いたプロセスアプローチ」と呼びます。

 それでは、実際の分析手順に沿って、各要因について説明します。

アウトプット

 その農場における乳房炎の状況を把握するため、まずは生産(アウトプット)の実態を調査します。具体的には、乳房炎発生率、廃棄乳量、バルク乳の体細胞数・細菌数などを調査します。そして、次にアウトプットに影響する5つの要因を順番に調査します。

アウトプットに影響する5要因の検討

1.インプット

 搾乳という工程にインプットされる物質は、牛と搾乳資材です。通常、搾乳資材は酪農専用資材を決められた方法で使えば、問題になるケースは少ないです。一方、牛の健康性や乳房炎原因菌の保菌状況は農場ごとにさまざまです。そこで、牛の健康性として、BCS(ボディーコンディションスコア)、RFS(ルーメンフィルスコア)、糞スコア、バンク(飼槽)スコア、乳成分、飼料設計などを調査するとともに、全頭の乳汁細菌検査を実施し、どのような乳房炎原因菌を保有しているかを調査します。

2.人

 搾乳に従事する人の知識と技能について、ISO22000等で培った手法を応用して評価します。そして、知識や技能をさらに向上させる必要があれば、現場指導(OJT)や勉強会(Off-JT)を企画して実施し、スキルアップに努めます。

3.方法

 正しい搾乳方法や、原因菌検査に基づいた正しい治療法が実施されているかを調査し、必要に応じて改善を図ります。とくに搾乳法については、LAPタイム(前搾り~ミルカー装着までの時間、搾乳時間)を計測して、客観的に評価します。

4.施設・環境

 搾乳機械の適切性について、機器メーカーによる点検と現地での目視検査によって評価します(パルセーター波形、自動離脱の条件、配管の径と勾配など)。また、牛舎の衛生状態や牛体の衛生スコア(乳房スコア、肢スコアなど)を調査し、搾乳環境の衛生を評価します。

5.評価指標

 適切な搾乳作業や乳房炎管理ができているかを評価するため、以下の指標を調査します。

  • バルク乳の培養成績
  • ラクトコーダー等による流量曲線
    (前搾り不足によるバイモダリティー出現、平均ピーク流量、過搾乳の有無など)
  • 全頭の乳頭スコア
  • ソックスフィルタースコアなど

分析と改善~具体的な手順

 上記5つの要因を調査することで、その農場における乳房炎の真因を探ることが可能になります。それでは、具体的な手順を説明します。

1.事前のデータ送付

 事前に、搾乳機器メーカーによる点検結果、乳房炎発生データ、バルク乳成績などを当クリニックに送っていただき、当方で分析します。また、全頭の乳汁を採取して冷蔵で送っていただき、当方で細菌検査を行います。

2.現地調査と搾乳立会

 上記の分析が終了したら、農場を訪問し、搾乳機械の保守状況、牛舎の衛生、牛の健康性(BCS、RFS、糞スコア)などを調査します。その後、搾乳立会を行い、LAPタイムや乳頭スコアを計測します。また、搾乳前後に聞き取り調査を行います。なお、全100以上のチェック項目を調べるので、場合によっては朝夕(計2回)搾乳立会を行う場合もあります。

3.改善提案

 すべてのデータをまとめたら(通常、2~3週間後)、再度、農場を訪問し、調査結果を説明し、その上で、長期・中期・短期に分けて改善プランを提案します。ここまでで、1つの区切りとします。

赤松ファームクリニック

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