ルーメンフィルスコア(Rumen Fill Score: RFS)とは、第一胃の充実度、いわゆる「肋張り」のことです。
RFSは、BCSと並ぶ重要な指標です。
BCSが配合飼料などに由来するエネルギー摂取の指標であるのに対し、RFSは粗飼料摂取の指標です。
つまり、BCSとRFSは車の両輪のようなもので、どちらかだけを評価すると判断を誤る場合があります。
RFSは、主に膁(ケン)部の凹凸を、最後肋骨と比較して評価します。
ただし、著作物によって判定基準が違い、横突起の見え方も含めて評価する手法もあります。
しかし、ある程度、簡易な基準を認識していないと、現場で何十頭も計測することはできません。
そのため、私は以下のように(簡易に)整理しています。
スコア1=膁(ケン)部が台形に陥没(かなり飼料を食べてない)
スコア2= 〃 三角形に陥没
スコア3= 〃 最後肋骨より手のひら1つ分、陥没(泌乳牛の標準)
スコア4= 〃 最後肋骨と同じ高さ(泌乳後期~乾乳牛の標準)
スコア5= 〃 最後肋骨より膨満(第一胃アトニー、鼓張症の疑い)
注)BCSとちがって、RFSは採食からの時間で変化します。そのため、定時に観察する必要があります。
上記の基準は、簡易ですが、限られた時間で多数の牛を計測する上では有用です。
RFSもBCS同様、正確性にこだわるより、スコア1,2(採食不良)の牛がどれくらい存在しているか、群の状況を評価することが重要と思います。
(スコア5の発生は稀です。一般的には、乾物摂取量の不足、あるいは消化スピードが速すぎることによるスコア1、2の発生が問題となります。)
一般に、分娩直後のRFSはアンダーである場合が多く、その後、泌乳期用飼料を食い込むことでRFSは回復します。
しかし、RFS回復が遅い牛は粗飼料の摂取(乾物摂取量)が不十分のため、相対的に濃厚飼料過剰になり、泌乳初期~最盛期にかけて潜在性ルーメンアシドーシス(Sub-Acute Ruminal Acidosis: SARA)に罹患しやすくなります。
また、牛群全体で(泌乳ステージにかかわらず)RFSが低下している場合は、全体に粗飼料が不足していることが示唆されます。この場合、飼料設計の見直しが必要です。
反芻家畜である牛は、生命活動を第一胃の発酵に大きく依存しています。
つまり、RFSの低下は、反芻家畜としての不健康さを示しています。
とくに、RFS低下と関連する潜在性ルーメンアシドーシス(SARA)は免疫機能を低下させ、乳房炎に罹患しやすい体内環境をつくります。
そのため、RFSの維持・改善は乳房炎を防除する上でも、たいへんに重要です。
RFSについても、デーリイ・ジャパン誌(2020年4月号)に、写真や成書に基づいた判定基準を掲載しているので、参考にして下さい。