第4章3.(4)では、許容限界を逸脱した場合の対応として、①~④の事項を求めています。
しかし、①~④の事項は、順番がやや不適切です。
また、農場HACCP認証基準には、「是正措置」の定義について、明確に書かれていません。
農場HACCP認証基準の母体となった、ISO22000:2005では、許容限界を逸脱した場合の対応として、「修正」と「是正処置」に分けて、以下のように記述しています。
「修正」は、許容限界を逸脱した場合、その影響を受けた製品を特定して、分別や廃棄、用途変更などを行うことです。
「是正処置」は、逸脱の原因を究明して、再発防止策を実施し、さらにその防止策が有効であったかを検討する、一連の作業のことです。
つまり、「修正」は応急対応、「是正処置」は原因究明と再発防止といえます。
これにあてはめて、第4章3.(4)を読み解くと、以下の順番に整理することが妥当です。
<修正>
② 逸脱した状態で生産された家畜又は畜産物の分別と処理の方法
③ 正常への復帰
<是正措置>
① 逸脱した原因の究明
④ 再発を防止するための対策
実際に逸脱が起きた場合、上記の順番(②→③→①→④)で行うことが妥当であり、実際的です。
また、解説書の例でも、この順番で実施するよう、記述されています。
なお、農場HACCPに取り組んでいない農場では、なにか事故が起きた場合、「修正」でとどまる場合がほとんどです。
たとえば、酪農場において、休薬期間中の乳の混入事故があっても、生乳を廃棄して処理は終了します。
社長から注意喚起の訓示があるかもしれませんが、「原因究明」や「再発防止」まできちんと行う農場は少ないでしょう。
一方、農場HACCPに取り組む農場では、是正措置として、原因究明や再発防止が要求されます。
事故後に、このような「原因究明、再発防止」に取り組むことは、より管理能力の高い組織への成長を促します。
「修正」で終わらせない、「是正措置」まできちんと行うことが、組織の体質改善に重要な役割を担っているのです。
注)ISO22000:2005では、「是正処置」と翻訳されていますが、農場HACCP認証基準では「是正措置」となっています。どちらも意味するところは変わりません。