第4章2.危害要因(ハザード)分析では、重大なハザードが存在する工程を洗い出し、必須管理点(Critical Control Point: CCP)として特定します。
そして、第4章3. では、CCPにおけるハザードの管理手段として、「HACCP計画」を策定します。
HACCP計画に要求される事項は、第4章3.(1)~(6)に記述されています。
そこで、(1)~(6)について、順を追って解説します。
(1)必須管理点(CCP)の決定
ここでは、「HACCP計画によって管理しなければならない危害ごとに、必須管理点を明確にすること」とあります。
つまり、HACCP計画は、危害(正確には危害要因=ハザード)ごとに作成することが要求されています。
(2)許容限界の決定
許容限界とは、「許容可能と許容不可能を分ける基準」と定義されます(コーデックス委員会、HACCPシステム及びその適用のためのガイドライン)。
つまり、この基準を逸脱したら、安全を担保できない限界値といえます。
あくまで、「安全を担保できない限界値」ですので、それを逸脱したからといって、すぐに危害が発生するわけではありません。
食品工場では、調理時の加熱工程をCCPとして、「中心温度○℃以上、△分加熱」と許容限界を決めるケースが多くみられます。
畜産農場では、酪農場におけるバルク乳温度監視や、採卵鶏農場における卵の保冷温度監視をCCPとした場合、明確な数値である「温度」を許容限界として設定できます。
たとえば、酪農場において、バルク乳温度監視(微生物増殖の低減)について「HACCP計画」を策定する場合、「朝、搾乳開始前=4℃以下」「夜の帰宅時、10℃以下」と、監視時刻に応じた許容限界(温度)を決めます。
そのため、仮に「朝の搾乳前=7℃(+3℃逸脱)」であれば、すぐに危害は生じないにしても、乳の細菌検査を行うなど、対応が必要になります(場合によっては、乳の廃棄もありえます)。
このように、許容限界を「逸脱」した場合、なんらかの対応をしなければなりません(逸脱時の対応は、(4)是正措置の確立で説明します)。
一方、休薬期間や注射針の管理では、数値としての許容限界は設定できません。
この場合、「(出荷時に)休薬期間を過ぎていること」、「注射針の残留がないこと/注射針残留(もしくは疑い)のある個体を識別していること」が、許容限界になります。
ちなみに、ISO22000(国際HACCP規格)では、HACCP計画とは別に、OPRP(オペレーションPRP)という管理手段が導入されています。
OPRPとは、PRP(前提条件プログラム=一般的衛生管理プログラ対応とほぼ同義)のうち、とくにハザードを管理する上で有効と判断された管理手段です。
OPRPも、HACCP計画と同様に管理手段や逸脱時の対応を文書化しなければなりませんが、「許容限界の設定」は求められていません。
そのため、前述の休薬期間や注射針残留は、ISO22000ではOPRPで管理することになります。
しかし、農場HACCP認証基準には、OPRPという概念(用語)がありません。
そのため、重大なハザードのうち、数値化した許容限界を設定できないものでも、一括してHACCP計画で管理します。