私は平成18年(2006年)、ISO22000:2005の勉強を開始し、講習会に参加しました。まだ、国内におけるISO22000認証がスタートする前で、農場HACCP認証基準が発表される3年前です。
その時、講師の方が「流通業界からISO22000などの取得が工場に要請され、さらに農場にも要請される時代が来る。」とおっしゃっていました。
「いずれ、そういう時代が来るだろうが、10年後になるか、20年後になるか、予測がつかないな。」と漠然と思っていました。
その後、農場HACCP認証基準が公表され(2009年)、審査が開始されましたが(2012年)、その時点では、まだ流通業界から畜産農場への強い要請はありませんでした。
しかし、JGAP家畜・畜産物の普及に伴い、大手流通業界による畜産農場へのJGAP取得要請が始まっています。
流通業界から見ると、安全は前提であり、JGAPに包括される環境保全などが、さらなるセールスポイントになるようです。
まさに、13年前の予測が現実になりました。
多くの畜産農場が、JGAP家畜・畜産物に取り組むことは良いことだと思います。第三者認証によって出荷する畜産物の信頼性は高まり、農場のステータスも向上します。
しかし、流通からの要請によって取り組む場合、気をつけなければならない点があります。
それは、農場が自発的に行うのではなく、流通から圧力を受けたと感じてしまい、”やらされ感”が生じることです。
では、どのようにすれば、”やらされ感”を払しょくできるか?
さまざまな方法や意見があると思いますが、私は「自発性をはぐくむこと」が、最良の方法と考えます。
そして、自発性をはぐくむには、JGAPの管理点・適合基準について、その目的は何かを理解し、共有することが重要と思います。たとえば、”生産工程におけるリスク管理(6.1~6.5)”は、消費者への危害を防止するために実施しますが、自農場の経営被害を防止することにもつながります。
このような ”目的意識”を共有するには、組織としての対応が必要になります。つまり、組織として、JGAPに取り組む目的や意義を明確にする必要があります。
きっかけは、取引先からの要請であったとしても、取り組みにあたって、経営者は「なぜ、JGAPに取り組むのか」「自農場にどのようなメリットがあるか」「従事者にどのような利益を与えられるか」を明確にし、伝えることが重要と思います。
私自身、JGAP家畜・畜産物のコンサルティングを行う場合には、これらのことを重視したいと考えています。