コラム

第2章 経営者の見直し~理想と現実のちがい

農場HACCP認証基準第2章6.では、「衛生管理システムの見直し」として、”経営者が情報源を明確にして、見直しと改善を行うこと”が要求されています。

マネジメントシステムは「経営の中で、資源を有効に活用し、方針・目標を達成すること」ですから、経営者の見直しはたいへんに重要な事項です。

しかし、認証基準第2章6.の本文を見ると、見直しの頻度や具体的な方法は規定されておらず、非常にあっさりとした記述になっています(経営者は見直しなさい、と言っているだけ)。

そのため、初期の解説書では、この部分について、とくに詳細な解説はなく、経営者の見直しを喚起するのみで、具体的な”衛生管理システムの見直し”は、第6章2.および3.に基づいて行うよう、解説されていました。

その後、経営者の関与をより重視すべきという意見が出て、大きく改定されました(私自身も改定に関わりました)。そこで(自分も関わったことなので)、解説書(平成26~27年度版)に掲載された第2章6.の解説例にしたがって、コンサルタント先の3農場で実践しました。

しかし、上手く実践できませんでした。

そこで、私自身の反省を込めて、上手くいかなかった原因を検討したいと思います。

農場HACCP認証基準は、ISO22000:2005をベースとしたマネジメントシステムです。そして、ISO22000:2005では、経営者の関与を促すため、「マネジメント・レビュー」という要求事項があります(5.8)。これは、経営者(経営層)によるレビュー(再検討、論評)を要求するもので、実施頻度や記録も要求されています。

しかし、ISO22000:2005では、レビューを行う前提として、「レビューへのインプット」が要求されています(5.8.2)。これは、経営者が適切にレビューできるよう、組織(HACCPチーム)が経営者にHACCPやマネジメントシステムの運用状況を報告(インプット)するものです。具体的には、組織を取り巻く状況の変化や緊急事態の有無、検証活動の結果、監査や審査の結果など、a)~g)の7項目にわたって報告事項が決められています。

そして、マネジメントレビューからのアウトプットとして、経営者は報告に基づき、以下の4点について総評や指示を行うことが要求されています。

1.食品安全の保証

   出荷する食品・畜産物の安全性の保証について検討し、必要な指示を

   出すこと

2.システムの有効性の改善

   HACCP、マネジメントシステムが有効に機能しているか検討し、

   問題があれば改善を指示すること

3.資源の必要性

   人・設備等の不足がないか検討し、必要があれば充当すること

4.組織の食品安全方針及び目標の改訂

   方針や目標の妥当性を検討し、必要があれば改定すること

このように、ISO22000マネジメントレビューはインプットとアウトプットの仕組みがきちんと決められているのです。

しかし、この仕組みを十分に理解しないまま、農場HACCP認証基準第2章6.の解説欄にISO22000マネジメントレビューの概念を導入してしまったように思います。

つまり、HACCPチーム(あるいはチームに参加するコンサルタント)が半年~1年の運用状況を上手にまとめて経営者に報告しないと、経営者は見直しを指示できません。

この「報告」という前提なしに、”見直し会議”を行っても、上手く機能しないでしょう。

また、ISO22000では、レビューからのアウトプット項目が上記4つに整理されています。しかし、農場HACCP認証基準第2章6.の解説例では、認証基準第1章~第7章までの事項を順番に見直す内容となっています。

しかし、経営者は一般に忙しく(農協への支払い、税金の申告、雇用の確保、賃金の支払い、規模拡大の計画…)、HACCPだけをやっているわけではありません。経営者自身が指導員研修を受講している場合もありますが、そうでない場合も多いです。

そのため、経営者が農場HACCP第1~第7章を十分に理解し、報告書なしに会議に臨んで適切に見直しの指示を出すということは、あまり現実的ではないと思います。

また、中小規模の農場では、経営者が農場作業を実施している場合が多く、自分で自分をレビューするという不自然さも生じます。

第2章6.の解説例(平成27~30年度版)の「衛生管理システム見直し規定」の記述内容は、すばらしいものですが、それを実践できるだけの組織力を持つ農場は限られてしまうかもしれません。

なお、第2章6.の本文では、「経営者が見直すこと」としか書いていないので、解説例のような見直しを実施しなくても、ただちに不適合になることはありません。(<あくまで、例…>と書いてあります。)

そのため、私の支援する農場では、だんだんやらなくなりましたし、実施していない農場もいくつかあります。

ただし、経営者による見直しを何らかの形で行うことは必須であり、重要な事項です。

そこで、経営者の見直しをどのように行うべきか、「第6章2.情報の分析」、「第6章3.衛生管理システムの更新」との関連性も含めて、次回に例を挙げて掲載したいと思います。

 

 

 

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