コラム

第2章 緊急事態への対応~演習のススメ

農場HACCP認証基準第2章5.では、特定事項への備えとして、畜産物に重大な事故が発生した場合、あるいは家畜伝染病や自然災害が発生した場合など、5つの事態を想定して対応手順を作成することが要求されています。

”特定事項への備え”というと、ちょっとわかりにくいですが、いわゆる”緊急事態への対応”のことです(もし、認証基準が改正される場合には、”緊急事態への対応”に変えた方が、わかりやすいのでは、と提起したことがあります)。

HACCP(7原則12手順)では、ハザードが許容限界を超えないよう、モニタリング(監視)を行い、万一、逸脱した場合は、是正措置を実施して、安全を確保します。

さらに、ISO22000:2005では、安全でない製品が組織外に流出した場合の”製品回収” 手順も文書化することが求められます(7.10.4 回収)。

また、食品安全上の事故(食中毒、異物混入)だけではなく、火事、停電など、幅広く緊急事態を想定し、それらへの対応手順を文書化することが求められます(5.7 緊急事態に対する備え及び対応)。

農場HACCP認証基準 第2章5. “特定事項への備え” は、ISO22000:2005の上記事項を参照して策定されたものです。

しかし、ISO22000では、回収手順(プログラム)の有効性を確認するため、模擬回収や回収演習を行うことが、あわせて要求されています。

私は前の職場(静岡県畜産技術研究所)でISO22000責任者(食品安全チームリーダー)をしていたので、当然、演習を企画しました。生乳の場合、物理的に”回収”はできないので、出荷先での”廃棄”を想定して、演習を行いました。

そのうち、”出荷先での廃棄”だけではなく、さまざまな緊急事態を想定して、年に1回、演習を行いました。すると、対応手順を作っただけではわからなかった、さまざまな問題点が提起されました。たとえば、「〇〇という事態が発生して、食品安全チームリーダーに報告しても、回答を待っている間に集乳車が来たらどうする?」というシビアな質問をされたこともあります。そこで、現場での集乳車への対応手順や生乳廃棄の規定を、より現実的なものに改善しました。

このような演習を行うことで、自分たちで作った特定事項への備えが有効か、検証することができます。また、ある意味、ゲーム感覚で実施できますし、従事者にとって、”特定事項への備え”をより身近に感じてもらえます。

農場HACCP認証基準に、”演習”の要求はありませんし、義務ではありません。しかし、実際にやってみた経験から、面白く、価値のある作業と思います。外部専門家(管理獣医師等)にも協力してもらい、年に1回くらい、実施してみたらいかがでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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