農場HACCP第2章6.では、経営者による衛生管理システムの見直しが要求されています。そして、その解説部分はある時期に大きく加筆されました。
私もそれに参加しましたが、実践した結果、私が支援した農場では上手くいきませんでした。
(その理由は、前回のコラムに書きました。)
そこで現在、私が行っている方法を紹介したいと思います。
私は、農場を月1回、訪問し、畜舎や家畜を観察したり、生産データを見た後、HACCP委員会に参加します。そこでの議事進行は、「衛生管理目標」に沿って行います。
つまり…、
1.健康な家畜としての乳房炎発生率、バルク乳体細胞数・細菌数
2.疾病頭数と内訳
3.HACCP計画の逸脱の有無
4.一般的衛生管理プログラムの検証(畜舎巡回の所見)
5.飼養衛生管理基準の遵守状況
6.現場からの改善提案…、
と議事を進めていき、目標を達成していない事項があれば、「是正処置管理表」で多角的に要因を分析し、改善を図り、必要があればシステムを更新します。
また、上記の議事に、「第6章2.情報の分析」で情報源とするよう規定されている7項目(内・外部コミュニケーション、一般的衛生管理プログラム、HACCP計画、検証活動、教育・訓練の実施状況、経済性に関わる監視事項=出荷成績、疾病頭数など)が含まれるように配慮しています。
そして、最後に経営者の総括(コメント)をもらって議事録に記載し、委員会を終了します。
これで、「第2章1.(2)衛生管理目標の定期的な見直し」「第2章6.(経営者による)衛生管理システムの見直し」「第6章2.情報の分析」「第6章3.衛生管理システムの更新」を満たすことができます。
しかし、ISO審査員の方から、「月1回の見直しも重要だが、もう少し長いスパン(1年くらい)で経営者は見直しを行うべき」と助言をいただきました。
そこで、年度末(3月)に1年間に起こったことを私を含むHACCPチームで整理し、経営者に報告し(インプット)、経営者にレビュー(再検討)してもらい、そこからアウトプット(総評、改善の指示)をもらうようにしています。
その際、形式的に認証基準第1章~第7章まで順番に経営者から総評をもらうことはしていません(以前、その方法で上手くいかなかったので)。
経営者がレビューしやすいよう、以下の項目に整理して報告し、総評や改善指示をもらっています。
1.畜産物の安全性(HACCP計画の逸脱、記録漏れ、事故・クレームの状況)
2.家畜の健康性と生産成績(疾病の発生、損耗率、出荷量など)
3.畜舎の衛生(5sなど)
4.法律の遵守(とくに法改正への対応など)
5.組織の運営
(1)人的資源
HACCP委員会での発言や議論への参加の状況、技能(スキル)の状況、
新人と組織の調和、人員不足、休暇の取得…
(2)継続的改善の状況
内部検証、外部審査、HACCP委員会での指摘に、どのように対応してい
るか
(3)衛生管理方針・目標の改訂
現在の方針や目標が妥当か、意見を提出し、最終的には経営者に改定する
かどうかを決めてもらう。
ただし、年1回の報告と見直しについては、まだ始めたばかりで、十分に有効性を検証していません。今後、有効かどうか見定め、必要があれば改善し、また、コラム等で紹介したいと思います。
また、4.(1)人的資源については、デリケートな部分があるため、HACCPチームを介さず、私(コンサルタント)から経営者に直接、報告する場合があります。
実際、従事者とのコミュニケーションに悩む経営者は意外と多く、雇用の安定に向けて相談に乗る機会も多々あります。月1回の訪問で感じた従事者の状況を経営者に伝え、双方の意見を調整することも、私の仕事ととらえています。
いずれにしても、経営者によるシステムの見直しは、マネジメントシステムの重要事項です。認証基準の意図するところを理解し、農場に合った仕組みを提供し、不具合があれば改善を図ることが、指導員(コンサルタント)の役割と考えます。