前回、目標は具体的であることが重要で、数値化しにくい目標については、行動目標あるいはスコア化を紹介しました。今回はそれらについて、より詳細に説明します。
目標は「結果目標」と「行動目標」に大別されます。
1.結果目標
いわゆる成果目標のことです。
前回の例では、「健康な乳牛」の目標として、乳房炎発生率やバルク乳体細胞数といった”数値”を目標として挙げています。
一方、「安全な生乳」については(安全は事故ゼロを基本とするため)、”ゼロ維持”を挙げています(ゼロが数値目標)。
また、牛舎衛生(5s)は数値化しづらいため、牛舎衛生の目標(2)では内部検証員によるスコア評価を挙げています。
結果目標はこのように、原則として数値化し、数値化しにくい事項は維持目標あるいはスコア化を導入します。
2.行動目標
行動そのものを目標とすることです。
一般に企業では、個人の目標として行動目標を設定することが多いようです(例:毎日、〇件の顧客訪問を行う。毎朝、営業先に△件の電話をする…)。
結果目標が不確定要因に左右されるのに比べて、行動目標は意思があれば達成できます。そのため、経営者や上司が達成を承認すれば、努力を認めることになり、担当者のモチベーションが上がります。
この考え方を応用し、前回の例では、「農場HACCP認証の維持・改善」や「牛舎の衛生(5s)」に行動目標を設定しました。
HACCP委員会(月1回)で検証と改善を行う、あるいは経営者が月1回、農場巡回を行うことはまさに行動であり、それを繰り返すことで継続的改善が図られます。
成果を求める”結果目標”と比べて若干、甘い感じもしますが、具体性に欠ける目標を立てるよりも、格段に効果があります。
結果目標や行動目標を組み合わせて、自農場に合った目標を立て、その達成を管理することで、農場の方向性が見えてきます。また、経営者が目標の達成を承認することで、従事者のモチベーションは上がり、経営者と従事者の距離が近くなります。
私は平成26年(2014年)まで「農場HACCP認証基準の理解と普及に向けて(解説書)」の改訂に携わりました。その後、平成28年(2016年)にISO審査員の方から方針と目標の整合や行動目標について教えてもらい、自分なりにアレンジして上記の手法を考案しました。
そのため、解説書とは方針や目標設定のアプローチが異なり、解説書の例と違う部分があるかもしれません。ただし、解説書本文にもある通り、解説書の例は<あくまで例…>です。解説書の考え方をさらにステップアップさせたものとして、活用していただければ幸いです。