マネジメントシステムとは、「経営の中で資源(人・物・資金…)を最適に活用して、方針や目標を達成すること」といえます。つまり、方針や目標を立てることは、マネジメントシステムの第一歩です。
農場HACCP認証基準(マネジメントシステム)においては、畜産物安全性や家畜の健康性、さらにはそれに関連した生産性について、衛生管理方針や衛生管理目標を立てることになります(第2章1.経営者のコミットメント)。
衛生管理方針(以下、方針)とは、「農場HACCP認証に基づいた衛生管理を導入することで、健康な家畜から安全な畜産物を生産し、社会に貢献し…」といった組織の方向性を示すスローガン的なものです。
一方、衛生管理目標(以下、目標)は、方針に基づいて策定し、具体性があり、定期的に見直すことが要求されています。
ここで大事なことは、方針と目標は原則として整合させること、そして目標は具体的であることです。
方針はそれだけでは組織に浸透させることは難しく、掲示したまま放置される可能性もあります。そこで、方針に基づいた具体的な目標を設定し、その達成度や進捗状況をミーティング等で確認することで、方針を定着させていきます。
以下に、実際の農場HACCP認証農場の方針(一部抜粋)を記載します。
【方針】
1.私たちは健康な乳牛から安全な生乳を生産し、地域・社会に貢献します。
2.そのために、私たちは農場HACCP認証基準に基づいた衛生管理システム
を構築し、維持し、改善を図っていきます。
3.地域で親しまれる農場として、牛舎の衛生(5s活動)に努めます。
平成〇〇年△月△日 〇〇牧場 経営者 〇〇 ○○
上記のとおり、方針にはキーワードがあり、それらをアンダーラインで示しました。次に、キーワード(アンダーライン)にしたがって目標を立てます。
【目標】
1.健康な乳牛
(1)臨床型乳房炎の発生率(搾乳頭数比)3%以下
(2)潜在性乳房炎の指標 バルク乳 体細胞数10万個/ml以下
バルク乳 細菌数1万個/ml以下
(3)年間の成牛更新頭数 成牛頭数60頭の20%以下=12頭以下
(屠場への出荷9頭、死廃3頭以下)
2.安全な生乳
(1)バルク乳温度 夜の搾乳終了時、出荷時ともに 1~5℃を維持
(2)初乳、休薬期間中の乳、殺菌剤・洗剤の混入なしを維持
(3)月1回、HACCP委員会でクレームを確認し、クレーム”ゼロ”を維持
3.農場HACCP認証の取得と維持
(1)平成〇〇年△月までに同認証を取得
(2)HACCP委員会(月1回)で目標の進捗と問題分析を行い、必要に応じて
改善を図り、適切に維持する。
4.牛舎の衛生(5s活動)
(1)経営者による農場巡回をHACCP委員会(月1回)で行い、衛生状態
(5s)に改善点があれば、協議する。
(2)内部検証(年2回)で、内部検証員(管理獣医師等)による農場巡回を
行い、別紙スコアに基づいて評価し、スコア△点以上を達成する。
方針のキーワードにアンダーラインを引き、それに基づいて目標を立てることで、両者を合致させることができます。そして、目標の進捗管理をHACCP委員会で確認することで、方針が少しずつ浸透し、従事者の経営参画意識も醸成されます。
ただし、目標には数値化しやすいものと、数値化しにくいものがあります。
上記の目標でも、”健康な乳牛”については数値目標、”安全な生乳”については維持目標を策定しています。一方、”HACCP認証の維持・改善”や”牛舎衛生”については数価を設定しづらいので、行動目標あるいはスコア化を導入しています。
次回は、目標設定のテクニックとして、「結果目標(成果目標)」と「行動目標」について掲載します。