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マネジメントシステムの全体像を理解する。

令和2年(2020年)3月を迎えましたが、世界的に新型コロナウィルス感染症が拡大し、わが国でも社会的な影響が出ています。仕方のないことですが、当方に依頼された講演もいくつか中止になりました。

さて、久しぶりのホームページ更新になり、恐縮ですが、最近の審査で感じたことを、執筆します。

昨年4月の開業以来、農場HACCPの審査に多くたずさわらせていただきました。しかし、認証数の増加に伴い、せっかく農場HACCPを構築しても、十分に機能していないケースが散見されるようになりました。

実際に生産現場を見ると衛生管理が不十分であったり、慢性疾病が多発していたり、記録漏れが生じている場合があります。

もちろん、審査で指摘します。

しかし、なぜ、このような事態が生じるのでしょうか?

さまざまな原因はありますが、根本は「マネジメントシステムの全体像(本質)を十分に理解していないこと」にあると思います。

マネジメントシステムとは「目標を達成するために、人・物・金・時間などの資源を最適に活用し、組織(農場)を維持・発展させていく体系的な仕組み」と定義されます。

しかし、これでは、わかりにくいので、農場HACCP認証基準に即して整理すると、以下のようになります。

1.方針に基づいて、目標を立てる

2.目標と整合させて、家畜・畜産物の特性(出荷時の安全基準)を規定する。

3.目標および安全基準を実現するための仕組みを作る。

4.仕組みを実施したら、記録を残す。

5.記録を検証し、目標の達成度を指標(モノサシ)にして有効性を評価する。

6.目標達成が不十分であれば、原因を分析して改善を図る。

上記1~6を図式化したものを末尾に添付します(クリックすると、大きく表示されます)。

方針→目標→安全基準→仕組み→記録→検証→改善、の流れが整合して運用されていれば、農場はおのずと発展します。この流れに不整合があると、農場は停滞します。

たとえば、衛生管理方針と衛生管理目標が乖離している例がみられます。方針には「家畜を健康に飼育し…、安全な畜産物を生産し…」とあっても、食品安全の目標がなく、生産指標のみが挙げられているケースがあります。

また、HACCPの第一義的目標は食品(家畜・畜産物)の安全性であり、そのために生産工程を調査してハザード分析を行い、必須管理点を設定します。安全目標がないことは、その時点で「目標」と「仕組み」が乖離していることになります。

安全目標がないことは、HACCPや一般的衛生管理プログラムが有効に機能しているか、判断する指標がないことになります。

「健康な家畜」を方針や目標に挙げていても、そのための具体的な生産技術(疾病防除等の仕組み)が構築されておらず、慢性疾病が制御できていないケースもありました。

検証活動が不十分な農場もみられました。そのような農場では、記録を取ることが目的になってしまい、記録を検証して改善につなげるという仕組みが十分にできていませんでした。

農場HACCP(マネジメントシステム)の全体像を理解していないと、方針、目標、仕組み、検証が相互にかみあわず、結果として機能しない農場HACCPになってしまうのです。

指導員(コンサルタント)は、これらの点を理解して、農場HACCP(マネジメントシステム)が円滑に機能するよう、配慮する必要があります。

また、審査員も「方針・目標・仕組み・検証…」が整合しているか、点検することが重要です。整合していない箇所を整理し、それを是正するための審査所見を提示することが、審査員の役割でもあります。これが、まさに「有効性審査」です。

次回は、有効性審査について、さらに説明したいと思います。

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