コラム

第3章 危害要因分析の準備とは?

少し間が空いてしましたが、農場HACCPの関するコラムを再開します。

農場HACCPは私にとってライフワークであり、最終の第7章まで、現場で感じたことや経験を中心に、順番に綴っていきたいと思います。

さて、第2章は経営者責任というマネジメントシステムの要件が記述されていましたが、第3章「危害要因分析の準備」、第4章「一般的衛生管理プログラムの確立とHACCP計画の作成」と、いよいよHACCPの中核部分に入っていきます。

では、第3章「危害要因分析の準備」とは、どういうことでしょうか?

第4章で取り扱う「危害要因分析」とは、生産工程や作業、原材料ごとに物理・化学・生物的な危害要因(危害を起こしうる要因=ハザード)を抽出し、その管理手段を決めていく作業のことです。

つまり、危害要因分析の準備とは、生産工程や作業をはじめ、原材料や施設など、農場全体の衛生に関わる状況を整理して文書化することを意味します。具体的には、以下の作業になります。

1.原材料・資材の安全性確認(リスト化)

 自農場に搬入される原材料・資材の安全性を確認する作業で、安全な畜産物生産の第一歩になります。  

2.家畜・畜産物の特性と意図する用途(「製品説明書」の作成)

 自農場の出荷物がどのような特性(安全基準)を有しており、それがどのような形で最終消費者に届くかを規定し、危害要因分析でハザードを評価する際の指標(物差し)として活用します(後述)。

3.生産工程図(フローダイアグラム)

4.作業分析シート(作業手順書)

 3.4.は連動しており、生産工程を時系列に沿って整理したものがフローダイアグラムで、それにしたがって作業手順を詳細に記述したものが作業分析シート(作業手順書)になります。

5.生産環境の文書化(農場の見取り図、清浄度区分、動線図)

 農場の見取り図を作成し、清浄度区分(ゾーニング)や作業動線を記入し、衛生管理区域も明確化します(伝染病の侵入や伝播、交差汚染といったリスクを管理する上で必要になります)。

危害要因分析の準備とは、上記の5つを指しますが、ISO22000や食品工場等のHACCPを経験した人であれば、上記5つがまさに、「一般的衛生管理プログラム」そのものであることに気づくと思います。

ISO22000:2005では、7.3 ハザード分析を可能にするための準備段階、の前に、7.2 前提条件プログラム(一般的衛生管理プログラムとほぼ同義)として、建物の構造や廃棄物の処理、要員の衛生、交差汚染防止など、a)~k)の項目について文書化することが要求されています。

つまり、ISO22000:2005では、一般的衛生管理プログラムを明確化し、施設や作業全体を広く文書化した上で、ハザード分析の準備として原材料の安全性確認やフローダイアグラム作成に入っていきます。

一方、農場HACCP認証基準では、このあたりがやや不明瞭で、「一般的衛生管理プログラム」と「危害要因分析の準備」が混同されています。加えて、第4章では、「一般的衛生管理プログラムは作業手順書、作業マニュアル等の文書により定めること」とあるので、要求事項にしたがって文書を作ると、”作業分析シート(第3章)”と、”作業手順書(第4章)”と似たような文書が出来てしまい(文書の重複)、農場に負担をかけてしまう場合があります。

このあたりの問題については、「第3章4.(2)現状作業の明確化」で、あらためて提起したいと思います。

整理すると…、

「第3章 危害要因分析の準備」とは、第4章の危害要因分析を可能にするため、農場全体の衛生に関わる状況を文書化することです。

具体的には、① 原材料・資材リスト ②製品説明書 ③フローダイアグラム  ④作業分析シート(作業手順書) ⑤見取り図(ゾーニング、動線を記入)を作成することです。

このうち、④の作業分析シート(作業手順書)は、第4章で規定する一般的衛生管理プログラムの中心を成すものであり、第3章で作成する文書全体が、一般的衛生管理プログラム(農場における衛生管理全体を広く文書化したもの)そのものあることを理解しておく必要があります。

そして、一般的衛生管理プログラムを策定することで、次の第4章 危害要因分析(ハザード分析)に進んでいきます。

それでは次回、「第3章1.素畜等の原材料及び資材」について、解説していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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