コラム

1.総合的な乳房炎の防除

乳房炎に関するコラムを始めることにしました。

私は昨年(H31)4月に畜産コンサルタントとして開業しました。

1年後の今日、まさか、家畜ではなく、人へのウィルス感染症のパンデミックが起きるとは、想像していませんでした。

その影響で、農場HACCPの審査や、講演会が延期になり、在宅時間が長くなりました。そこで、この時間を有効に使うべく、HPの更新を進めています。

4月以降、農場HACCPのコラムを精力的にアップしました。

そして、乳房炎のコラムも開始することにしました。

といっても、デーリイ・ジャパン誌に連載中の内容を加筆したものですが…。

(原則として、同誌に未掲載の内容はアップせず、誌面に掲載後、順次、アップしていきます。ご了承ください。)

デーリイ・ジャパン誌もぜひ、お読みください。

さて、牛の乳房炎とは、どのような病気でしょうか?

乳房(乳腺)への細菌あるいは真菌(カビ)による感染症であることは間違いありません。

しかし、乳房炎の発生には搾乳者の意識・技量(人)、正しい搾乳法や治療法(方法)、牛の健康性(牛)、搾乳機械(施設)など、さまざまな要因が関与します。

つまり、単純な感染症と思って、菌の同定や治療技術だけ追い求めても、十分な成果は上がりません。

そのため、総合的な視点から乳房炎にアプローチする必要があります。

私は大学卒業後の4年間、北海道NOSAIに勤務し、臨床獣医師の立場で乳房炎防除に取り組みました。

その後、静岡県に転職し、畜産技術研究所で17年間、管理獣医師として乳房炎の防除に取り組みました。

同所ではさらにISO22000(国際HACCP規格)認証に取り組み、マネジメントを学びました。

それらの知見を活用し、さらに企業が実践している問題解決手法を加味して、総合的な乳房炎防除の手法を開発しました。

一方、麻布大学 乳房炎リサーチセンターの河合教授は、ご自身が設立された十勝乳房炎協議会(TMC)が編み出した「乳房炎防除管理プログラム」の普及に尽力されています。

当クリニックは河合先生から、さまざまに助言・指導を頂いています。

そのため、河合先生と協議し、当クリニックの手法も「乳房炎防除管理プログラム」と名称を統一し、麻布大学と連携して、本手法の改良や普及に取り組んでいます。

この「乳房炎防除管理プログラム」の特徴は、「総合分析」と「リスク評価」にあります。

つまり、「総合的な調査・分析」によって、その農場における乳房炎の真因(= 問題点)を特定し、「リスク評価」によって問題点の重みづけをおこない、優先度を付けた改善策を提案します。

マネジメントの考え方や、企業の問題解決手法を取り入れて開発した手法であり、他にあまり例のない手法と思います。

それでは次回より、「乳房炎防除管理プログラム」の内容について、解説していきます。

赤松ファームクリニック

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