コラム

第3章 作業分析シートについて

第3章4.(2)では、現状作業の明確化として、工程内作業、日常および定期・不定期作業について、「作業分析シート(手順書)」を作成することが要求されています。

農場HACCP認証基準では、主な生産工程について、フローダイアグラムを作成し、それに該当する作業を「工程内作業」とする考えが、暗に示されています。

そして、「工程内作業」以外は、「日常、定期・不定期作業」に区分します。

しかし、上記の考えをそのまま実施すると、フローダイアグラムは大まかに1~2枚、作るだけで、各作業のフローダイアグラムは作らないことになります。

しかし、これでは各作業の工程(時系列的な流れ)が明確化されず、どこに重大なハザードがあるか、分からなくなる可能性があります。

たとえば、搾乳牛に抗生物質を投与する場合…、

①獣医師との連携(治療立会い)→ ②投与後の識別(通常、後ろ足にバンドを巻く)→③記録→④廃棄牛群に移動→⑤搾乳時、バンドを確認→⑥バケットミルカーを用意して廃棄、と結構、複雑な手順が生じます。

この場合、②投与牛の識別、⑥乳の廃棄(記録)が重要であり、そこでの管理をしっかり行わないと、ハザードによる事故(医薬品の残留)が起こりやすくなることがわかります。

つまり、不定期作業「治療」であっても、フローダイアグラムを書き、時系列を整理した方が、どこに危険性があるか、明確になると思います。

このような理由から、私は、「工程内作業」であれ、「不定期作業」であれ、フローダイアグラムを書いた方がよいと思っています。

(私個人の取り組みですが)、以下の手順で作業を進めています。

まず、農場作業全体を俯瞰する整理図を作成し(令和元年度版の解説書、P46)、乳牛飼育や搾乳に関するメインの生産工程を「工程内作業」とします。それ以外の作業は、「日常、定期、不定期作業」に区分します。

そして、工程内、日常、定期、不定期作業、すべてについて(簡易でもよいので)、フローダイアグラムを書きます。

このやり方は、フローダイアグラムの枚数が多くなるので、取り組み時の作業がやや大変ですが、その反面、各作業が見える化され、視覚的な理解が促進されます。

また、時系列的に整理されるので、作業分析シートも作成しやすくなります。

とくに書類が増えすぎることはありません。詳細な機械作業を伴う「搾乳」を除けば、ほとんどの作業は簡易なフローダイアグラム1枚で済みます。

実際、私が支援した農場の書類分量は、他農場と比べて、むしろ少ない方だと思います。

そして、私は「作業分析シート」という名称を使っていません。

農場HACCP認証基準には、「作業の実施時期(頻度)、目的、手順・方法を文書化すること」と記述されており、これはいわゆる「作業手順書」のことを意味しています。

そのため、私が支援した農場では、すべて「作業手順書」という名称にしています。

また、「作業手順書」は現場で使うものなので、必要に応じて絵や写真を添付して、分かりやすくしています。  

そして、作業手順書の内容が現実に合っているか、あるいは最近、変更した事項がないか、現場の従事者によく検証してもらいます。

このようにして作成した「作業手順書」は、従業員教育や業務の引き継ぎに、たいへん有用です。

第3章4.(3)現状作業の明確化として作成した「作業手順書」は、一般的衛生管理プログラムの要として、生産を支える重要な文書となります。

赤松ファームクリニック

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