マネジメントとは「(組織が)目標を達成するために、経営資源(人・モノ・情報・資金)を最適に活用して、継続的に発展する仕組みを作り、運用すること」です。
つまり、「目標」「経営資源」「継続的な発展」がキーワードになります。
(多くの人は、マネジメント=管理と考えていますが、これは誤解です。これについては、また別の機会に解説します。)
今回は、マネジメントの第一歩である「目標」について、考えます。
農場HACCP認証基準における目標は、「衛生管理目標(第2章)」になります。そして、「具体的な目標」であることが要求されています。
具体的というのは、「達成度を判定できる」ことであり、検証や改善活動において、「指標になりえる」ことが条件になります。
つまり、数値化が望ましく、数値化しにくいものは行動目標に置き換えて判定できるようにすることが望まれます。
しかし、その視点から見ると、農場HACCP認証基準解説書(公社・中央畜産会発刊)の「衛生管理目標の例」は、(個人的には)やや不適切と思います。
(同解説書については、私も平成26年まで携わりました。しかし、見返してみると、自分が記述した部分も含めて、いくつか不適切な記載があり、今後の改正が必要と思います。)
たとえば、令和元年度版を見ると、衛生管理目標について、P14では「生産環境の整備を図る」とありますが、これでは達成度の判定が難しいですね。
そもそも、生産環境という言葉自体が曖昧です。たとえば、「牛舎と搾乳施設の5S向上に努める。具体的には、農協の巡回(年1回)で〇ポイント以上を獲得する」とすれば、管理しやすくなります。
また、P15では、「乳牛の繁殖管理を徹底することにより、年間分娩数110頭を達成する」とあります。これにも、違和感を感じていました。
農場HACCPの第一義的目的は「家畜・畜産物(食)の安全と家畜衛生」です。
一方、乳牛の繁殖は、感染症も関与しますが、主には「発情発見技術、適切な栄養コントロール、飼育環境のストレスコントロール、適切な繁殖管理プログラム」といった技術を組み合わせて管理します。
つまり、食の安全や家畜衛生とは一線を画した、独自の高度技術を組み合わせるものであり、単に作業分析シートに繁殖管理手順を書き出せば繁殖成績が上がるようなものではありません。
もちろん、食の安全や家畜衛生とあわせて、繁殖を管理することは可能です。 しかし、それには前述の高度技術をきちんと文書化し、JMRや妊娠率(発情発見率×受胎率)を常にモニタリングする体制を整える必要があります。
そこまで考えて、繁殖指標を目標に入れるのであればよいのですが、安易に記述すると「目標」と「実際の仕組み」が乖離してしまい、なんのための目標かわからなくなります。
では、適切な「衛生管理目標」を立てるには、どうすればよいか、次回に解説したいと思います。