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HACCPで乳房炎を制御できるか?~資料を配信します。

農場HACCPの第1の目的は「食品安全」です。

そのため、臨床型乳房炎をしっかりと発見し、廃棄することは必須です。

また、安全な畜産物は健康な家畜から生産されるため、「家畜の飼養衛生の向上(家畜衛生)」も、目的に包括されます。

そこで、一般的衛生管理プログラムの中で、搾乳機器の衛生管理や牛体の汚れ防止、牛床や飼槽の清潔管理なども実施します。

そのため、一定の衛生管理を実施している農場であれば、農場HACCPに取り組むことで、ある程度、乳房炎を制御できるかもしれません。

しかし、牛舎はたいへん清潔であっても、黄色ブドウ球菌(SA)による潜在性乳房炎に苦慮していた農場を知っています。その農場では、SA対策に特化した規定を作り、制御しました。

また、ある農場では衛生的な搾乳を実施していましたが、なかなかバルク乳体細胞数が15万個/ml以下になりませんでした。しかし、配合飼料の過剰給与があり、潜在性ルーメンアシドーシスが示唆されたため、配合飼料の減量を図ったところ、バルク乳体細胞数は10万個/ml以下を維持できるようになりました。

さらに、ある農場では、フリーバーンのベッド管理を改善することで(1日2回攪拌+オガコ増量による水分調整)、環境性レンサ球菌(Other Streptococcus)による乳房炎の制御に成功しました。

実は上記はすべて、静岡県内で農場HACCPを取得した農場の実例です。

これらをみてわかるとおり、乳房炎は原因が多岐にわたり、農場ごとに発生状況が異なるため、一律的な対応では不十分であることがわかります。

そこで、様々な試行錯誤の末、私は企業が実践する「タートルチャートを用いたプロセスアプローチ」という手法を応用して、乳房炎を制御するようになりました。

この方法は、乳房炎の原因を、「人・牛・方法・搾乳機械と環境・評価指標」の5つから分析し、そこから導き出された対策を実践し、さらに対策の効果をモニタリングして修正を図る方法です(詳細は、当ホームページの ”乳房炎防除”ページを参照下さい)。

ただ、このプロセスアプローチ(多角的な要因分析)に基づいた対策を実施する上で、農場HACCPの仕組みはたいへんに役立ちました。

例えば、HACCP委員会で月1回、議論する習慣があること、コミュニケーションの充実、経営者責任の明確化、教育・訓練の仕組みなどは、乳房炎対策を実践する上で、きわめて有用でした。

私は現在、酪農場で農場HACCPのコンサルティングをする祭、”農場HACCP”と、”プロセスアプローチ”を車の両輪のように運用して、乳房炎を防除し、生産性の向上に努めています。

慢性の呼吸器感染症や下痢症と比べて、乳房炎は搾乳機械や搾乳法の適切性、原因菌による治療法の違いなど、要因や対策が多岐にわたります。

そのため、この厄介な病気を制御するには、農場HACCPの仕組みに加えて、多角的に要因を分析する手法が必要と思います。

実はこのテーマについて、先月(2019年6月)、新潟県獣医師会で講演させていただきました。

その時の 講演要旨、プレゼン資料を一部改変し、当クリニックからの情報として配信したいと考えます。

ただ、学会誌や成書で公表(パブリッシュ)されたものではないので、不特定多数の方への配信はせず、当ホームページのお問合せ欄からアクセスしていただいた方に、注意事項を添えてメール送付したいと思います。

上記の資料が、少しでも、HACCPや乳房炎防除に関わる皆様に、参考になれば幸いです。

アクセスをお待ちしています。

 

 

 

 

 

 

赤松ファームクリニック

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